自律神経の働きを整える鍼灸③「立ちくらみがして、元気がでない人」

仕事で、立っている事が多いと言うBさん(52歳、女性)は、昨日、頭がフラフラしてきて

立っているのがしんどくなり、椅子に座ったら最後、今度は気分が悪くなり、起立するのが

困難になったので、その日は自宅に帰り安静にしていました。家族の人に、肩を揉んでもら

ったら少し楽になったので、肩が凝っているのかと思いご来院になられました。

上記は、Bさんの施術前のHRV(自律神経バランス分析)です。自律神経の活動が低く、特

に交感神経の活動が低くなっているのが解ります。立ちくらみや、耳鳴り、難聴、疲れやすい

といった症状が出ている場合、東洋医学では、体表を通っている経絡の一つである腎経に変調

が出ていると考えます。Bさんにベッドでうつ伏せになってもらい背部を切経(触診)してい

くと、腰部にある命門、腎愈と言ったツボに反応が出ていました。これらのツボは腎に異常が

あるときに反応点として体表に現れます。また、解剖学的にも腎臓の上端に帽子のような形を

して乗っている副腎という内分泌腺があります。その副腎髄質というところから交感神経の神

径伝達物質であるノルアドレナリンが分泌されますが、機能が低下し分泌量が減ると交感神経

が働きにくくなります。腰椎の一番目と二番目付近にこれらの反応点が出現しやすく、東洋医

学では、三焦愈、命門、腎愈と言ったツボ(経穴)がそれにあたり、治療(刺激)する点でも

あります。Bさんへの施術は上記のツボにじっくりと時間をかけて刺鍼して、命門にはお灸も

しました。また、腎径の変調を整える為に足の裏にある湧泉というツボと足首の内側にある太

けいと言うツボにも補鍼(弱い刺激)を行い、主訴である肩凝りの治療を行いました。

上記は翌日のBさんのHRV(自律神経バランス分析結果)です。昨日と比べると、交感神経

の活動も良くなり、バランスもとれています。Bさんも顔色が良くなり、元気が出てきたと言

って喜んでいました。この日も昨日と同じ治療を行いました。今回の症例のように自覚症状と

離れた場所に治療すべきポイントがある場合もありますので、初めて鍼灸治療を受けられる方

は、少し戸惑うかも知れませんが、身体の異常を知らせてくれる反応点(ツボ)は思いもかけ

ない所に現れます。  *個人情報保護の観点から症例に出てくる人物の年齢、性別を変更し

ている場合があります。